自筆証書遺言

寺島司法書士事務所 司法書士 民事信託士 寺島優子

自筆証書遺言についての改正

自筆証書遺言は、遺言者がその全文、日付、氏名を自書し、印を押すことが要求されますが、この度の改正では、遺言書の財産目録の部分については、自書の必要がなくなりました(遺言事項については、今まで通り自書する必要があります)。これにより財産目録については、パソコンで作成したり、預貯金は通帳写しの添付、不動産であれば登記事項証明書の添付でも構いません。但し、各頁に署名・押印が必要です。偽造・変造されるのを防ぐためです。もしも財産目録が紙の両面に記載されていれば、両面に署名・押印を行います。裏面が白紙であればその部分に第三者が目録を追加するのを防ぐためです。
財産目録の内容を変更する場合には、遺言事項の変更と同様に、どの部分か分かるように示し、これを変更したと記して署名、変更場所には押印します。財産目録の内容を差し替えたいときも、民法に則って行う必要がありますので、前の目録は斜線等で消して、斜線上に押印し、新しい目録に追加印を押して、遺言事項に訂正の言葉を記入し署名・押印します。
1枚の遺言書の中に、自筆部分とパソコンで打ち込んだ部分が交ることは認められていません。
遺言事項と財産目録との間の契印は必ずしも行う必要はありません。但し、一つの遺言書であることが分かるように、両方を封筒にまとめて入れておくと良いです。
遺言事項と財産目録の押印は、必ずしも同じ印鑑で行う必要はありません。また、遺言書の押印は実印であることを要求されません。

自筆証書遺言の保管制度

今まで公正証書遺言であれば、公証役場で遺言作成者が120歳になるまで保管され、遺言者の死後容易に検索することができました。自筆証書遺言の場合には、遺言者が作成したことを誰にも打ち明けなければ存在を知られぬまま相続手続が終了してしまうリスクがあり、打ち明けておいたとしても発見されないリスクがありました。また、自筆証書遺言は家庭裁判所における検認手続を踏まなければ遺言の内容を実現することはできませんでした。
「法務局における遺言書の保管等に関する法律」の制定により、遺言者は作成した遺言書を封をしないで法務局に持ち込み、保管申請を行うことができるようになりました。法務局の遺言書保管官は、持ち込まれた遺言が申請者本人の作成であることを確認し、データ化して保管・管理します。
遺言を撤回したくなった場合にも、遺言作成者が法務局に出向いて撤回することができます。
また、検認手続に代わるものとして、遺言者の死亡により遺言が効力を生じた後、相続人等から、保管された遺言の内容の交付請求を行うことができます。これにより死後発見されないままとなるリスクが減り、偽造・変造を防ぐことができるので、検認手続が不要となります。

自筆証書遺言は万全となるか

遺言書保管官による審査は、遺言書を作成したのが申請人本人かという点を確認するもので、遺言書の有効性を審査するものではありません。また、遺言者の判断力に問題があることが疑われる場合には、遺言者の死後、遺言能力について争われる点も、今までと変わるものではありません。
法務局における形式的審査権とは、自筆証書遺言の方式を満たしているか、外形を確認する審査を行えば法務局は責任を免れるということで、実態の審査まで踏み込むことはありません。不動産取引において、実体は司法書士が確認し、法務局は形式的に書類が整っていれば申請を受理してきたのと同様です。具体的には、申請人本人が作成したものかの説明を求め、日付や氏名の記載、押印の有無、遺言事項が手書きされているかを確認する作業を行います。

自筆証書遺言は誰にとっても身近なものとなるか

終活と称して早い段階から遺言書を作成する方もいますが、亡くなる直前に作成する方、判断力や身体能力が弱ってから作成する方もいます。そうした方にとっては、遺言書保管制度を利用するには、本人が法務局に出向くことが必要なので、作成、撤回とも難しいように思います。遺言書の保管申請先は、遺言者の住所地もしくは本籍地、遺言者の所有する不動産の所在地を管轄する法務局に対して行います。1度遺言書の保管申請を行うと、それ以後別の遺言書を作成した場合の保管申請先も、同じ法務局になります。法務局は統廃合で数が減ったため、申請先が遠い方は多いのではないでしょうか。