後見と民事信託
寺島司法書士事務所 司法書士 寺島優子
任意後見契約とは
任意後見契約とは、委任者が、自ら選んだ任意後見人に対して、精神上の障害により判断力が不十分な状況における自らの生活、療養、財産管理に関する事務の全部又は一部について代理権を与える契約を公正証書でかわしておき、実際に判断力が低下した時に、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から、委任契約の効力が発効するというものです。法定後見と違い、後見事務の内容と、後見をする人を自分で決めておくことができる、委任者の意思を尊重した後見制度です。
任意後見人に任せる事務は全部でも一部でも良いのですが、契約の効力が発生した後、不測の事態に対応できなくならぬよう、包括的な代理権を与えることが多いです。しかし、委任者と任意後見人との間でどのような後見事務を行うかの聞取りが不十分で、かつ、包括的な代理権が与えられていると、判断力の低下した後の事務を任意後見人が何でも行えてしまう「何とでも好きにしてくれ」といった契約になってしまうので、非常に危うい後見制度にもなり得ます。そこで、委任者のライフプランを聞き取ってそれを形にしておいていただくことや、あくまで後見人である以上「成年後見人等と同様、その事務を行うにあたっては、本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態および生活の状況に配慮すべき(任意後見法第6条)」ことが大切になってきます。
任意後見人はこうした委任者の詳細な希望の聞取りによって、法定後見のような守るだけの財産管理だけでなく、財産の活用等の積極的な財産管理も行えることになろうと考えられます。但し、そこには任意後見法第6条の配慮や、任意後見監督人(及び家庭裁判所)の意見が反映されることになりますので、積極的な財産管理とは言っても、リスクをとることまでが許容される訳ではないとも言えます。このリスクへの判断が、任意後見人と任意後見監督人とで分かれれば、当初想定していた財産の活用ができない事態も起こり得ます。
任意後見人に任せる事務は全部でも一部でも良いのですが、契約の効力が発生した後、不測の事態に対応できなくならぬよう、包括的な代理権を与えることが多いです。しかし、委任者と任意後見人との間でどのような後見事務を行うかの聞取りが不十分で、かつ、包括的な代理権が与えられていると、判断力の低下した後の事務を任意後見人が何でも行えてしまう「何とでも好きにしてくれ」といった契約になってしまうので、非常に危うい後見制度にもなり得ます。そこで、委任者のライフプランを聞き取ってそれを形にしておいていただくことや、あくまで後見人である以上「成年後見人等と同様、その事務を行うにあたっては、本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態および生活の状況に配慮すべき(任意後見法第6条)」ことが大切になってきます。
任意後見人はこうした委任者の詳細な希望の聞取りによって、法定後見のような守るだけの財産管理だけでなく、財産の活用等の積極的な財産管理も行えることになろうと考えられます。但し、そこには任意後見法第6条の配慮や、任意後見監督人(及び家庭裁判所)の意見が反映されることになりますので、積極的な財産管理とは言っても、リスクをとることまでが許容される訳ではないとも言えます。このリスクへの判断が、任意後見人と任意後見監督人とで分かれれば、当初想定していた財産の活用ができない事態も起こり得ます。
任意後見と民事信託の違い
任意後見では監督人報酬が必要になります。この報酬の発生を嫌って、委任者の判断力低下後に、監督人の選任申立てを行わないケースが見られるようです。たとえば、任意後見契約と合わせて判断力低下前の財産管理契約を委任したが、委任者の判断力低下後も財産管理人としての立場で、監督者不在のまま、財産管理を続けてしまうのです。しかし、委任契約を交わした後に、委任者の判断力が低下すれば、委任者に代わって任意後見監督人が任意後見人の財産管理等を監督するからこそ、この契約が信用されるのであって、委任者が任意後見人を監督できない状態のまま、任意後見人が財産管理を続ければ、委任者の財産に関して、当然、紛争が起こるでしょう。
監督人報酬が勿体ないので、財産の管理を任せるなら民事信託(家族間信託)で対応したいというご相談もあります。しかし民事信託で対応できるのは財産の管理・活用・承継までで、判断力の低下した方の生活、療養について、本人に代わって行える仕組みではありません。その点については任意後見契約での対応を前提に、更に、民事信託の仕組みを取り入れるか否かを検討することになります。
民事信託は、原則、任意後見のように裁判所の関与がありませんので、財産の積極的活用について、任意後見監督人や家庭裁判所の意見に振り回されることはないのが利点です。本人が望んだ財産の管理活用承継を、確実に実現できる仕組みです。
ただ、信託は、受託者(財産を託される者)と受益者(信託利益を受ける者)との間の信認関係が大切になってきます。受益者は、委託者から受託者に移った信託財産が、自らのために適切に管理運用されていることを確認するために、受託者への監督権を行使します。受益者が監督権を行使できない状態にある者であれば、受益者代理人や信託監督人が、受益者に代わって受託者を監督します。こうした仕組みを取り入れれば、その者への報酬の支払いも発生するでしょう。
どのような関係者の協力が得られるのか、どのような財産をどう維持、運用、承継してほしいのか、様々な情報を元に、将来起こりうることを想定して、制度の利用を検討する必要がありそうです。
どちらの仕組みが合っているのか、もしくは両方採用すべきなのか、民事信託士とよく相談して決めてください。
監督人報酬が勿体ないので、財産の管理を任せるなら民事信託(家族間信託)で対応したいというご相談もあります。しかし民事信託で対応できるのは財産の管理・活用・承継までで、判断力の低下した方の生活、療養について、本人に代わって行える仕組みではありません。その点については任意後見契約での対応を前提に、更に、民事信託の仕組みを取り入れるか否かを検討することになります。
民事信託は、原則、任意後見のように裁判所の関与がありませんので、財産の積極的活用について、任意後見監督人や家庭裁判所の意見に振り回されることはないのが利点です。本人が望んだ財産の管理活用承継を、確実に実現できる仕組みです。
ただ、信託は、受託者(財産を託される者)と受益者(信託利益を受ける者)との間の信認関係が大切になってきます。受益者は、委託者から受託者に移った信託財産が、自らのために適切に管理運用されていることを確認するために、受託者への監督権を行使します。受益者が監督権を行使できない状態にある者であれば、受益者代理人や信託監督人が、受益者に代わって受託者を監督します。こうした仕組みを取り入れれば、その者への報酬の支払いも発生するでしょう。
どのような関係者の協力が得られるのか、どのような財産をどう維持、運用、承継してほしいのか、様々な情報を元に、将来起こりうることを想定して、制度の利用を検討する必要がありそうです。
どちらの仕組みが合っているのか、もしくは両方採用すべきなのか、民事信託士とよく相談して決めてください。